カテゴリー: マーケティング書籍紹介

2016年03月31日 by Atsushi Shibayama

3月決算の企業では、今日は最終日ですね。あと一息です。頑張っていきましょう。

さて、本日ご紹介するのは書籍ではありません。マーケターのみなさんも自社のプロダクト/サービスをさらによくするにはどうすればいいか、考えることも少なくないと思います。そしてそうしたイノベーションは社内だけではなかなか上手くいかないと感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

先日参加したあるフォーラムで、一橋大学の米倉教授がオープンイノベーション戦略について講演されていました。軽妙な語り口ながら本質をズバリと突いていき、そしてそれは過度に学究的にならず、人間心理などもしっかりと加味した提言になっているのが印象的です。本日はその内容をご紹介します。

 

・オープンイノベーションとは、顧客により速く新商品を届けたいという目的を果たすために採る戦略。オープンソース(外部ナレッジ)を利用することで、内部取引コストより外部取引コストが安い場合に適用される。

 

・オープンイノベーション戦略を採るにあたりどの領域で適用するかを選別するプロセスを経るが、これにより社運を賭けるような、内部リソースで開発すべき領域が明確化するのも大きな効果のひとつ。何から何までオープンイノベーション戦略を採る必要はない。

 

・日本企業が衰退せずさらに発展するためには、最もシンプルかつ重要なことは、顧客が何を考えているか欲しているかを新商品開発の起点にすべきという点。言い古されているがまだできていない企業が多い。また競争も激しくニーズも移ろいやすいにので、どれだけ素早くアイデアを商品化できるかがポイント。

 

・まともな付加価値(利幅)がつくのは新商品発売直後。数ヶ月で価格下落が起こる。顧客ニーズを見定めたらどれだけ素早く開発するか。競合より速ければその 分高マージン期間が延びるし開発管理コストも小さくなるというダブル効果がある。素早さを求めると外部ナレッジとの共創が有望な選択肢になる。

 

・おそらくオープンイノベーション戦略は、世の中をひっくり返すようなインパクト大な領域ではなく、商品改良のような小さな領域、プロセスイノベーションのような地味なところの方が活用されやすい。ポイントは顧客ニーズに応える新商品をどれだけ素早く開発するか?

 

・オープンイノベーション戦略成功の鍵は、どの領域か?ではなく、トップのコミットがあり具体的かどうか。内部技術者としては外部ナレッジ活用は自己否定に 直結するので消極的になりがち。経営トップが適用領域を選別しそこは必ずオープンイノベーション戦略を採り、いつまでに商品化せよと明確に指示すればよい。

 

・具体的には本業を補完するような領域がやりやすい。本業そのものではないから外部ナレッジを使うことに抵抗感も少ないし、成功した場合には本業への寄与も 期待されるので社内での支持も得られやすい。一度オープンイノベーション戦略で成功体験を積むと他領域でも適用してみようとなる。やってみて効果を実感できるもの。

 

・だからこそ逆に一度やってみないとどの領域でオープンイノベーション戦略を採りうるのか、そもそも思いつかないというのも特徴。内部リソースでの開発が常識の視野からは発想されない。この最初のオープンイノベーション戦略適用が鶏と卵の関係で難しい。

 

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2016年03月15日 by Atsushi Shibayama

前回に引き続き、今回はfacebookの考えを知ることができる書籍をご紹介します。「フェイスブック 若き天才の野望」。

もう5年ほど前の本になりますが、彼らがどんなことを考えて創業し成長させてきたのかがわかると思います。儲けよりも理想を追求する姿勢はグーグルとも似ていますが、またちょっと違う印象です。

 

ひと頃、大きく盛り上がったSNSのひとつくらいに捉えていたのだが、エリート大学生の欲求を的確に掴んでサービス化するところに、創業者の洞察力のすごさを感じます。印象的な部分はいくつもあったが、グーグルとの比較は、facebookの特徴を表していて納得できました。

 

「シナリオを2つ書いてみよう。それぞれシリコンバレーのふたつの会社に対応している。ここまで極端ではないが、彼らはスペクトルの両端にいる。一方の端にいるのはグーグルで、この会社は主として現在進行中の物事を追跡することで情報を取得する。彼らはそれをクローリング(這い回ること)と呼ぶ。ウェブを這い回って情報をかき集め、自分たちのシステムに持ち帰る。地図をつくりたいと思えば、みんなの家の写真を撮るワゴン車を大量に手配して、彼らのストリートビューシステムに使う。そして、彼らが広告のために人々のプロフィールを組み立てる方法は、ダブルクリックとアドセンスのクッキーを通じて、みんながウェブのどこへ行くかを追跡することだ。それが人の興味に関するプロフェースをつくる彼らのやり方だ---グーグルはすごい会社・・・」
彼がためらう。
「だが、これを論理的にとことん押し進めていくと、ちょっと恐ろしくなることがわかるだろう。反対の端でぼくたちは、違うやり方があるはずだと考えて会社をスタートさせた。みんなが共有したいものを共有できるようにして、何を共有するかを制御できる良いツールを渡せば、さらに多くの情報が共有されるようになる。しかし、全員とは共有したくないものを、全部フェイスブックで共有することを考えてみてほしい。クローリングやインデックスをされたくないものだってある---家族旅行の写真や自分の電話番号、会社のイントラネットで起きたことすべて、あるいは個人間のメッセージやメールなど。だから、多くのものがどんどんオープンになっていく一方で、全員に対してはオープンでないものがたくさんある」
「これは今後10年、20年で最も重要な問題のひとつだ。世界がますます情報を共有する方向に進む時、それが確実にボトムアップで行われる、つまり人々が自分たちで情報を入力して、その情報がシステムでどう扱われるかを自ら制御できるようにする必要がある。どこかの監視システムに追跡される集中制御方式ではなく。これは世界のために決定的に重要なことだと私は思っている」

 

facebookはプライバシー問題も、ターゲティング広告も、いろいろと話題になりますが、ユーザの欲求を的確に掴んでサービス化し、その欲求を外さずに発展させてきたところが、すごいところだと改めて感じます。同じようなコンセプトを考えついた人は他にもいるでしょうし、レコメンドやターゲット広告のサービスも色々ありますが、ユーザが自ら使ってもよい、少なくとも邪魔ではない、と感じられるサービスでなければ、ユーザを増やし、使い続けてもらうことはできず、結局レコメンド、広告など、機能しないでしょう。それを実現させたfacebookはやはり卓越した企業なのですね。

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2016年02月25日 by Atsushi Shibayama

デジタルマーケティングを実践していく上では、Apple, Google, Facebookなどの企業が提供するプロダクト/サービスを活用されていると思います。今回と次回では、彼ら自身がどのように考えて戦略を立て実行しているのかをご紹介していきます。

 

本日ご紹介するのは、「アップルvsグーグル どちらが世界を支配するのか」です。

iPhoneの発売の頃は、シリコンバレーのある会社と事業開発で協業していたこともあり、衝撃だったことを覚えています。生活者が持ち運ぶガジェットはひとつになるだろうと予測していたこともあり、快進撃を続けていたiPod+iTunesに電話+ネット接続機能が付加された機器をみて、やられたと思いました。あれで全データがクラウドに保管できるようになり、TVやPCともシームレスに繋がるようになると、まさにマイデジタルライフだなと。その後は、プロジェクトを外れたので、いち生活者として見ていただけですが、Androidの発表を見たときは、Microsoft対Appleの対決を思い出しました。水平分業でオープン化し、イノベーションの中心を担うOSを押さえサードパーティを巻き込んだエコシステムを構築するという戦略は、数十年前と同じ構図。Appleが垂直統合でUXを提供しようという作戦も。

 

それまで補完関係にあり、社外取締役やアドバイザーなどお互いに深く付き合っていた両社が、どのように袂を分かったのか、それぞれがイノベーティブなプロダクトを世に送り出すにあたって、どのような苦労があったのか、それぞれの物語も面白いですし、両社がどう絡みのかも興味深いです。「昨日の敵は今日の友」とか「永遠の敵も永遠の同盟国もない。永遠にあるのは国益だけだ。」という言葉を改めて思い出しました。

 

あのiPhoneの発表が、あんなにも綱渡りであったのはプレゼンの完璧さからは想像できませんでした。エンジニアは自分のキャリアを賭けそれこそ昼夜惜しまず働く姿は、ワークライフバランスなどとは程遠く、世の中を変えることに喜びとやりがいを感じているからこそできるのでしょう。

 

グーグルにしても、iPhone向けにアプリを開発しながら、Plan:Bとして自社でAndroidを開発していたのは経営者としては当然の判断としても、それを社内の圧力から護っていくマネジメントは意外とできないものだと思います。それをやってのけ、アップルからの攻撃もかわしつつ、育てていった軌跡を追えるのは貴重です。オープンであり、コントロールできることを、よしとする理想を追求した結果、iPhoneに対する差別化になったこと、iPhoneが先に発売され、独占的であったことから、他のキャリアやメーカの賛同を得やすい環境が醸成されたことなどは、作戦というよりは偶然だったというのも興味深い内容です。そのチャンスを生かした手腕も含め。

 

著者の主張としては、iPadこそがコンテンツ産業を変えた、という指摘はなるほどと思ったところ。そして、数十年前に構想しマックで成し遂げたかったこと、もっと生活者が使いやすく楽しめる機器、がiPadによって成し遂げられたというのは、ジョブスがその生涯をかけて実現したかった世界であり、それを達成して天界へ旅立ったというのは、何かを感じさせます。そして、その数十年前に味わった苦渋、創り上げたUIやらUXをどう護るか、については特許戦略として拘ったというのも。

 

モバイル、クラウド、ビッグデータ、が世界を変えているのは間違いなく、その覇権を握ろうとするアップル、グーグル、そしてアマゾン、フェースブックを加えた4巨頭がどのような動きを見せるのでしょうか。そんな彼らでも、狂気のように働くのはもちろん、試行錯誤をしながら突き進む姿はいろいろと面白いですね。

 

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2016年02月08日 by Atsushi Shibayama

本日ご紹介するのは、「企画力」。

マーケターのみなさんも施策を企画立案し予算獲得をされていると思います。面白い企画、斬新な企画、とその内容ばかりに注目されますが、実はその企画力とは立案するだけでなく、それを実現する力であるというのが著者が語られていることです。言われてみれば当たり前ですが、印象的でした。

 

それでは、本書のポイントをご紹介していきます。
・企画力
=人間と組織を動かす力

=企画を実現する力

≠企画を立案する力

=物語のアート
ひとつの事業やプロジェクトの、理念、ビジョン、戦略、戦術、行動計画
ひとつの商品やサービスの、イメージ、アイデア、コンセプト、デザイン
これらをひとつの魅力的な物語として「企画書」で語る

アート=「技術」と「心得」の結合

 

・最高の企画書=最高の推理小説

表紙を見ただけでも、手にとって読みたくなる最初のページと読むと、かならず次のページをめくりたくなる。そして、次のページを読むと、その先が読みたく なり、次々とページをめくって読み進んでしまう。気がつくと時間の経つのも忘れ、読み終えてしまう。とにかく、面白い。楽しい。静かな興奮を覚えるそし て、読み終えた後、そこで語られた「物語」が、深い印象とともに心に残る。だから、その「物語」を誰かに伝えたくなる。

 

・「知識」を学んだだけで、「智恵」を掴んだと錯覚しない

 

・企画書においては、企みを語れ。企みを、面白く、魅力的に語れ。
(夢と現実の絶妙なバランス感覚が求められる)

 

・「人間」が面白くないと、「企み」を面白く語れない
ただ「現実」を受け入れているだけの生き様は、面白くない
ただ「夢」を見ているだけの生き様も、面白くない

 

・「何を行うか」よりも、「なぜ行うか」を語れ

 

・企画書は、表紙の「タイトル」が勝負。読み手の気持ちを惹き付けられるか
=タイトルを見た瞬間に、ページをめくりたくなるか
→タイトルで「企み」を語る

例)
×IT革命時代の当社の事業戦略
(新しいビジネスモデルの提案)

○IT革命が求める「ニューエイジマン」への進化
(「販売代理」から「購買代理」へのビジネスモデルへ)

 

・企画書の構成は
表紙のタイトル=「企み」を短く、力強い言葉で語る
1ページ目  =その「企み」の背景にある「ビジョン」を語る
2ページ目  =表紙で語った「企み」を、「目標」に翻訳して語る

以降、目標を戦略に、戦略を戦術に、戦術を行動計画に順を追って語っていく

 

・企画書では、各ページのタイトルで問いを投げかけ、本文で「答え」を示す

「自問自答」のスタイルで「問い」と「答え」を投げかけ、読み手の思考の流れを導き、問題意識そのものを、どのように持つべきか提案する

 

 

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2016年01月21日 by Atsushi Shibayama

本日ご紹介するのは、「リーン・スタートアップ」です。

みなさんマーケターは、扱うプロダクトが顧客に受容され、欲してもらえるよう常に様々な工夫をしながら取り組んでいらっしゃると思います。実は、顧客自身ですら何を欲しているのか気付いていないようなものほど、爆発的な人気を呼ぶことがありますね。また、アーリーアダプターからマジョリティへ展開する際にも、求められるポイントが変わってきますが、仮説検証プロセスをいかに高速で回し、そこから得られた学びを反映して、成長のスパイラルに入っていくことが重要です。

 

本書はそのためにどうすればよいかを解説しています。

まずはプロダクトを作ってそれを世に問おうとうしてしまう姿勢は、筆者にも経験ありますが、失敗するからやめろと言います。何を作るべきかすら仮説であり、それを検証するためにフルスペックのプロダクトを開発しなければならないというのは思い込みだったと本書を読んで気付かされました。メンタルブロックがあるだけに勇気のいることでもあり、この常識を覆せるかどうかがスタートアップに限らず、成否を分けるポイントなのでしょう。

 

それでは、本書のポイントをご紹介していきます。

 

リーン・スタートアップの5原則
1)アントレプレナーはあらゆるところにいる
2)起業とはマネジメントである
3)検証による学び
4)構築ー計測ー学習
5)革新会計

・スタートアップ=とてつもなく不確実な状態で新しい製品やサービスを作り出さなければならない人的組織

・スタートアップの構築=組織の構築

・リーン・スタートアップ=サイクルタイムの短縮と顧客に対する洞察、大いなるビジョン、大望と様々なポイントに等しく気を配りながら、「検証による学び」を通して画期的な新製品を開発する方法

・思い込みを捨て、実験による検証という科学的な進め方をする

・「この製品を作れるか?」と自問したのでは駄目。問うべきなのは「この製品は作るべきか?」であり「このような製品やサービスを中心に持続可能な事業が構築できるか?」である

・4つの問い(製品の売り方と作り方がわかるまで、エンジニアリングの労力をつぎ込んでも意味がない)
1)我々が解決しようとしている問題に消費者は気付いているか?
2)解決策があれば消費者はそれを買うか?
3)我々から買ってくれるか?
4)その問題の解決策を我々は用意できるか?

・MVP(=Minimum Viable Product)による仮説検証
-動画型
-コンシェルジュ型

・誰が顧客なのかわからなければ、何が品質なのかもわからない

・ピボット
-ズームイン型
-ズームアウト型
-顧客セグメント型
-顧客ニーズ型
-プラットフォーム型
-事業構造型
-価値捕捉型
-成長エンジン型
-チャネル型
-技術型

・顧客に関する仮説を設定したら、それを検証するための、なるべく早い実験方法を考え、実行していく(=まず学ぶ必要があるものをみつけ、そこから逆順でその学びが得られる実験となる製品を考える)

・過去の顧客が持続的な成長をもたらす形式
1)クチコミ
2)製品の利用に伴う効果
3)有料広告を通じて
4)購入や利用のリピートを通じて

・3種の成長エンジン
1)粘着型(顧客の定着率)
2)ウイルス型(顧客の紹介率)
3)支出型(LTV)
本書は、スタートアップ向けに、どのようにマーケットにフィットするプロダクトを開発していくかを中心に記されていますが、これはデジタルマーケティングにも応用の利く内容ですね。

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2016年01月04日 by Atsushi Shibayama

あけましておめでとうございます。

昨年は、マーケティングオートメーションツールを導入し、デジタルマーケティングにトライアルされた企業が数多く出てきましたね。今年はそのチャレンジを本格化し、飛躍していこうと意気込んでいらっしゃるマーケターの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

我々も、このコラムを通じて、学んできたことをみなさんとシェアし、より一層チャレンジしていこうと思いますので、本年もよろしくお付き合いください。

 

さて、新年初めてご紹介するのは、「ゼロ・トゥ・ワン」です。

「ペイパルマフィア」という言葉を聞くことがありますが、Tesla、Yammer、Yelp、LinkedInなどはペイパル出身者による創業なのだそうです。本書の著者、Peter Thielもそのひとりで、ペイパルCEOだった人物。彼は、この本で「新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるか」について著しています。
「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」

と採用面接で必ず訊くといいます。未来とは世界が今と違う姿になっていることであり、それを左右するのはグローバリゼーションよりテクノロジーの方がはるかに重要であるのだから、それをどうやって生み出すのか、そのための問いだと。

そして、それを生み出すために最適なチームがスタートアップだと述べています。

・21世紀をこれまでより平和な繁栄の時代にしてくれる新たなテクノロジーを思い描き、それを創りだすことが、今の僕らに与えられた挑戦なのだ。

・新しいテクノロジーを生み出すのは、だいたいベンチャー企業、つまりスタートアップだ。(中略)より良い世界を作ってきたのは、使命感で結ばれた一握りの人たちだった。

・前向きに表現するなら、スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ。新しい会社のいちばんの強みは新しい考え方で、少人数なら俊敏に動けることはもちろん、考えるスペースが与えられることが大きな利点になる。

興味深いのは、リーン手法や競争を否定的に考えている点です。
・小さな違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい
・出来の悪い計画でもないよりはいい
・競争の激しい市場では収益が消失する
・販売はプロダクトと同じくらい大切だ。

資本主義とは本質的に独占に向かうのであり、競争は健全であるというのはイデオロギーでしかないと断じています。だから、どうやって独占状態を創り上げるかに心血を注ぐべきだと説いており、独占企業の特徴としては以下の点をいくつか持っているそうです。

・プロプライエタリー・テクノロジー
・ネットワーク効果
・規模の経済
・ブランディング

そして、独占を築くためには、慎重に市場を選び、じっくり順を追って拡大することが必要とも。

・小さく始めて独占する(少数の特定ユーザが集中していながら、ライバルがほとんどあるいはまったくいない市場)
・規模拡大(関連する少し大きな市場に徐々に拡大)
・破壊しない(古い業界を意識して大企業に直接挑戦するより、新しい市場の創造に力を注ぎできるだけ競争を避ける)

もうひとつ興味深いことがありました。
それは確率論ではなくべき乗則に従うこと。ポートフォリオ理論のように、起業家は自分自身を「分散」できないので費やす時間は何かに賭けることになります。VCのリターンも実はひとつの大成功案件のリターンが他の投資額を上回るというのは驚きです。とすると、どうやってそんな大成功なアイデアを見つけ出すのか?そのためのキーワードは「隠れた真実」だという。それを考えるための問い、それが冒頭の質問になるそうです。

賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?

AirBnBやUberはそれを見つけた例で、振り返ればごく当たり前に見える洞察があまりにも単純なので、隠れた真実の存在を信じそれを探さなければ、目の前にあるチャンスに気付くことはできないのだそうです。

この他、なるほどと思った点がありましたので、ご紹介します。
・創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない
・何かを始めるにあたって、最も重要な最初の決断は、「誰と始めるか」
・仲間と協力できる優秀な人材は必要だけれど、全員を長期的に一致されるような組織構造もまた必要だ。(3つの役割:所有、経営、統治)
・報酬は現金よりも自社株にすることで、社員の意識を未来価値の創造へと向ける(だからCEOの給料(現金)も少ない方がうまくいく)
・演技と同じで、売り込みだと分からないのが一流のセールスだ
・差別化されていないプロダクトでも営業と販売が優れていれば独占を築くことはできる
・販売にも独自のべき乗即があり、プロダクト自体に友人を呼び込みたくなるような機能がある場合、バイラルする。
・バイラル成長の可能性があるような市場の中の、いちばん重要なセグメントを最初に支配した会社が市場全体のラストムーバ―になる

最後に、ビジネスを成功させるために答えを出すべき7つの質問が参考になります。
1.エンジニアリング
段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術を開発できるだろうか?
2.タイミング
このビジネスを始めるのに、今が適切なタイミングか?
3.独占
大きなシェアがとれるような小さな市場から始めているか?
4.人材
正しいチーム作りができているか?
5.販売
プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?
6.永続性
この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか?
7.隠れた真実
他社が気付いていない、独自のチャンスを見つけているか?

終章で語っていた一節が印象的。未来は予測するものではなく、自らが創るものだ、という著者の主張がここに纏まっていますね。

今僕たちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来を創ること、つまりゼロから1を生み出すことだ。そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ。古代人が初めて世界を見た時のような新鮮さと違和感を持って、あらためて世界を見ることで、僕たちは世界を創り直し、未来にそれを残すことができる。

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2015年12月10日 by Atsushi Shibayama

本日ご紹介するのは、「その数学が戦略を決める」です。

デジタルマーケティングは、すべての行動を定量的に計ることができるのが特徴ですね。行動履歴をビッグデータとして分析することで仮説を検証したり、新たな知見を得たりすることもできます。行動観察などによる洞察し、そこから得られる本質はもちろん重要ですが、こうしたデータ解析による高速なPDCAもやっておくべき取り組みです。

 

本書は、ビッグデータといういわゆるバズワードが出てくる前に記されたものですが、その特徴や意味を解説しています。大量データ解析である回帰分析や無作為抽出、確率論が、直感や専門知識・経験を超える、ワインの質と値段は方程式で予測でき、野球選手のポテンシャルも予想できる、など。事例として、協調フィルタリングによるレコメンドが挙げられています。AmazonやNetflixはもちろんのこと、航空会社のマイレージプログラムでも回帰分析は駆使されているそうです。

回帰分析をビジネスに応用されるようになったのはチープ革命によって容易になったためで、大量のデータを生成できるだけデジタルガジェットが普及し、データをネットワーク上に送れるだけ広帯域・安価になり、データを保存できるストレージも安価になり、集積されたデータを解析するだけ高速なコンピュータが安価になったことが背景にあります。単純な計算ですが、それを高速に処理できる環境になったことで、難しい1つの方程式を見つけるのではなく、厖大なデータの高速な解析によって何かを導こうという試みが実現できるようになりました。

 

興味深いのは、Capital Oneの事例です。

彼らは従来の業務をITで効率化するのではなく、ITだからできることを前提に業務を組み立てたのが特徴で、無作為抽出の事例として紹介されています。もちろん過去データの解析から、コールセンタにかかってきた顧客のデータをリアルタイムで解析し、アップセルをかけたり、取引があまりなく重要性の低い顧客ならば自動でIVRに回すなどの取り組みです。見込み客へのDMでは、訴求メッセージを変えて、無作為に分けた2つのグループに送付し、反応率の違いから、効果を測定します。ウェブでは常識のABテストですね。

このほかにも、医療や政策での無作為テストの事例が紹介され、最後には標準偏差等の確率論を身につける必要性も説かれていました。

 

洞察・直感は人間だけが持つ能力で、数字を超えたところにこそ、未来を切り拓く力があると思いますが、データとその解析が示唆するものを併せ持つことで、その幅を広げられれば、仮説の精度も上がり、もっと面白く仕事に取り組めるかもしれませんね。

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2015年11月24日 by Atsushi Shibayama

11月も後半に入り、すっかり秋も深まってきましたね。この3連休は満喫されましたか?

さて、本日ご紹介するのは、「MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術」。「とらばーゆ」、「フロム・エー」、「じゃらん」など、おなじみの情報誌をを次々に創刊された、くらたまなぶ氏の著書です。

 

マーケティングとは、「人の気持ちを知ること」と言い切るなど、分かりやすい内容です。企画とは特殊な技能ではなく、才能でもなく、きちんと生活者の目線で不満・不平を感じることが大切、と言っているのも共感できます。

 

それでは、ポイントをご紹介していきます。

・マーケティング=人の気持ちを知ること

・市場調査=昨日までの「人の行動」を数字で知ること
・マーケティング調査=明日からの「人の気持ち」を言葉で知ること

■商品企画者の心構え
・いい商品をつくるためには、商品のことを考えてはならない
・一番知らなくてはいけないのは「相手」のことである
・個人として、ちゃんと生活すること
・送り手のプロになるためには、受け手のプロにならなくてはならない
・受け手のプロを目指すからには、夢を追い求めようということ、その感情に忠実になること、そのわき起こった感情を、ちゃんと心にとどめておくこと
・人の話をよく聞く

■生まれて初めてにチャレンジする
①人に聞きまくる
②資料を読みまくる
③とにかく実践する

 

■商品開発のプロセス
①人の気持ちを知ること(ヒアリング)
②それを言葉にすること(市場の課題抽出)
③言葉をカタチにすること(商品への反映)
④できたカタチを、ふたたび言葉で人の気持ちに訴えること(営業・流通・宣伝・広報)

・「人の気持ち」を徹底して集めることが重要
・「人の気持ち」をきちんと把握しないまま、あとの3つを進めてしまうと全てが不完全なものになってしまう

 

■人の気持ちを聞く
・まずは「身近な人」から聞き始める(忌憚ない意見を聞く)
・次に「嫌いな人」「とっつきにくい人」「なぜか苦手な人」に聞く(先入観を修正する)
・最後に「ふつうの人」に聞く
・恋人にしないことは、ヒアリングでもしない
(恋人を前に質問用紙を持って「私を好きですか」なんてやる人はいない)

 

■「したこと」から「思い」や「感じ」を引き出す
(「聞く」から「うながす」、そして「受け止める」へ)
①属性(○○です:be)
②行動(○○した:do)
③動機・背景(なぜなら~:because)
④心理・思考・感情(思う、感じる:feel,think)

 

■ニーズよりコンプレイン(不平・不満)
・夢よりグチが商売につながる(人は夢よりもグチにホンネを込める)
・「不」のつく日本語が、今後の作業の鍵を握っている
・「オヤッ?」と思った疑問は絶対そのままにしない

 

■炭坑のカナリア
=不平・不満に敏感な消費者
・ふだんちゃんと生活している。真面目に消費者をやっている。
・考えて選んでいる。買っている。判断・選択・決定している。
・買ったあとの「快」「不快」をちゃんと感じている。その感情に忠実である。
・それを明確に表現できる。言葉で。表情で。シェスチャーで。時には図解で。
・対策、解決策、代案まで言ってくれる。

 

■属性のワナにはまるな
=一人の消費者が時と場合によって違う人間に変わっていく
例えば、28歳OL
・職場旅行の幹事として「できるだけ安く、周りに観光ポイントが多い宿」
・半分親が出してくれて家族と行くなら「奮発して料亭旅館」
・大学時代の同性の親友と3人だから「貸別荘でいいか」
・上司に頼まれて「コテージ&ゴルフ接待」
・カレシにはとりあえず「飛行機で沖縄リゾートがいい」
・不倫パパとは「知ってる人と会わないひなびた温泉」

 

■起業の8プロセス
・カッコいい大風呂敷と 地味な一歩
・ロマンを語る(カッコいい大風呂敷=夢モード)
1.どんな夢を実現するのか 「夢は?」
2.誰に提供するのか    「誰に?」
3.何を提供するのか    「何を?」
4.どんなカタチにするのか 「カタチは?」
・ソロバンをはじく(地味な一歩=現実モード)
5.本当にカタチになるのか 「全体は?部分は?」
6.どれくらいの時間&空間で
創刊日、発行サイクル、営業期間、納期、営業エリア、販売エリア、拠点、勤務時間
7.どんなヒト&組織でやるのか
職種、人数、人材像、雇用形態、組閣、家賃、交通、通信、外注先
8.それがどれくらい成功するのか
売上、原価、経費、損益計算、黒字化、バランスシート

 

■プレゼン
=親に結婚の許可をもらうようなもの

すごくいい彼(市場)を見つけたの。
気持ち(マーケティング)もしっかり確かめたの。
いたらないところ(グチ)もあるけど、すっごく大きな夢(ロマン)を持ってるの。
彼のおかげで私も成長したのよ(感情移入・ユーザオリエンテッド)。
彼となら社会的にも(ロマン)、経済的にも(ソロバン)、いい家庭(事業)が築いていける。
彼と結婚できたら、こんな赤ちゃんができるのよ(カタチ、商品見本)。
3年間くらいで(先行投資)、ちゃんとやっていけるようにするから(黒字化)。
私、本気よ。絶対うまくやっていくから。真剣なんだから(情熱・ジョーダン)。
ね、お父さん、お母さん(経営陣)、お願い、いいでしょ?いいでしょ?(プレゼン)

「恋は盲目。のぼせてるんだろ」(ロマンへの反論)
「ずっと貧乏暮らしが続くに決まってる」 (ソロバンへの反論)
「たんなる一目惚れだろ」(ジョーダンへの反論)

・ロマン(理念、良くしたい、夢)
・ソロバン(収益、得したい、金)
・ジョーダン(意欲、面白くしたい、愛)

→ロマン、ソロバン、ジョーダンの3つ全てが揃って初めて、起業できる!

 

■メディアとソフト
・感動ソフト(エンターテイメント)
新聞、雑誌、放送、映画、演劇、ゲーム、コンサートホール、競技場、講演、教室
泣く、笑う、学ぶ、喜ぶ、ジーンとなる、観る、聴く、馬鹿にする
楽しむもの

・行動ソフト(アクション)
情報メディア、通販メディア、地図、電話帳、カタログ、○○ナビ、カラオケ目録
問い合わせ、予約、申込み、買う、入社、済む、食べる、旅する、結婚する
使うもの

 

■メディアの収入源
・販売収入(ユーザ課金)
・広告収入(IP(情報提供者)課金)

 

■メディアビジネスの4形態
①感動ソフト+ユーザ課金
旧来マスコミ、高校、スポーツ、エロサイト
②感動ソフト+IP課金
民放ラジオ/テレビ、PR誌、バナー広告運営サイト
③行動ソフト+ユーザ課金
ぴあ、ヤフオク
④行動ソフト+IP課金
リクルート社の各種情報誌、通販雑誌/番組、電話帳、楽天市場

 

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2015年11月07日 by Atsushi Shibayama

ブランディング特集の最終回は「スターバックスのライバルはリッツ・カールトンである」です。

 

ブランディングを研究していくと、ミッションやホスピタリティも気になりはじめるかもしれません。元スターバックスCEOの岩田氏とリッツカールトン日本法人の元社長が対談されています。スタバは不動産屋であると表現される方もいますが、単にコーヒーを売っているのではなく、サードプレイスというものをつくり、人々に活力を与えることをミッションにしているといいます。ライバルは、リッツカールトンやディズニーなどのホスピタリティとか感動体験を提供する企業であるとのこと。

 

対談では、西洋のホスピタリティと日本のおもてなしは理想とするものは同じだが、宗教観や文化の違いはあるという話や、オペレーションマニュアルはあり最低限の規則に従わせるが、サービスマニュアルはなく、ミッションをどう実現するかはどうあるべきかという規範に沿って、道徳、倫理、法律に反しない限り、ミッションを達成する行動が奨励されそれぞれが判断していくこととし、社会にどんな価値を提供する企業なのか、それに賛同・共感する人だけを採用し、性善説に立ち、従業員、取引先、顧客の順に大事に接する、といったマネジメント手法は興味深いですね。

最終的には、おもてなしやホスピタリティの話にとどまらず、ミッション、その根源として、働き甲斐、賞賛文化、人がどうあるべきか、修身、というところにまで行きつくそうです。

 

おもてなし=何を以って、何を為すのか

というのは、それを表わしていて、古来日本人は自分がどうあるべきかにより他者へどう接するかは自然に決まると考えていた、それがおもてなし、であるといいます。テクニックを真似してもそれは表層的でしかなく、企業も人もどうありたいのか、どのためにどうすべきかを一貫して考え行動することによってのみ実現するのですね。

 

カテゴリー:マーケティング書籍紹介

2015年11月06日 by Atsushi Shibayama

ブランディング特集の第6回は「ラグジュアリー戦略」です。

ラグジュアリー、プレミアム、ハイエンド、などとの違いもはっきりしていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。ラグジュアリーとは特権階級であることを周りに誇示するためのものであり、その階級に入っているという満足感を得られるものでなければならず、そのブランドがもつ個性が自分らしさを代弁するものであると著者は述べています。その効用を満たし続けるためには、顧客の声に耳を傾けるのではなく、クリエイターの狂気じみたこだわりと、そこから生じる世界観を表現し、伝えていくことが重要であるとも。つまり決して売ろうとはせず、媚びることもない。持つにふさわしい人のみに与える会員制クラブのようなものと解説されています。

レクサスが事例として本書ではよく取り上げられていますが、あのブランドはプレミアムであるがラグジュアリーではなく、ポルシェやロールスロイス、BMW、フェラーリ等とは異なり、機能の完璧さを追い求めた結果できあがったものであるということです。

アップルはジョブスのこだわり、世界観のつくりかた・伝え方、欠乏感の演出、アップルストアでのもてなし、価格戦略など、ラグジュアリー戦略をうまく取り入れているようです。

 

 

それでは、本書のポイントをご紹介します。

 

ラグジュアリーの起源は権力の象徴であり、その推進の理由は自由平等化、消費力の増大、グローバル化、コミュニケーションによって、民主主義が追いやった社会階層化を作り直すに必要なものである。

 

プレミアムの延長線上がラグジュアリーではなく、マーケティングと逆張りである。

1.「ポジショニング」のことは忘れろ

2.製品は傷を十分に持っているか?

3.顧客の要望を取り持つな

4.熱狂者でない奴は締め出せ

5.増える需要に応えるな

6.顧客の上に立て

7.顧客がなかなか買えないようにしろ

8.顧客を非顧客から守れ、上客を並みの客から守れ

9.広告の役割は売ることではない

10.標的にしていない人にもコミュニケーションせよ

11.実際の価格より常に高そうに見えるべきである

12.ラグジュアリーが価格を定め、価格はラグジュアリーを定めない

13.需要を増やすために時間が経つにつれ価格を引き上げろ

14.製品ラインの平均価格を上げ続けろ

15.売るな

16.スターを広告から締め出せ

17.初めて買う人のために、芸術へ接近するように努めろ

18.工場を移転するな

 

ラグジュアリーの特徴

・観念(レーベル)

・希少性

・独占感

・時間・伝承・歴史・手作業

・複雑性

 

ブランドエクイティの成長

・ブランドのないラグジュアリーはない

・実在する生身の人物である

・始祖を持つ

・光り輝かねばならない

・ライフサイクルがない

・正当性は専門分野よりも権威と階級と創作から創られる

・金融的価値がある

 

アイデンティティ・プリズム

・ブランド独自の記号

・個性(らしさ)

・他者に対して提供した自分自身の映った姿の影

・精神状態(ありたい姿)

・文化・DNA

・関係性

 

ブランド構築の2つの方法

・History

・Story telling

 

ブランドの設計思想

・アイコンについて頻繁に語る

・現在に共鳴し、トレンドや明日の嗜好を発する鍵にならなければならない

・手に届く製品を持たなければならない

・その地位と名声を高め続けなければならない

 

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