カテゴリー: マーケティング書籍紹介

2015年11月05日 by Atsushi Shibayama

ブランディング特集の第5回は「中小企業が強いブランド力を持つ経営」です。

「ブランド」というと、大企業やラグジュアリー企業が豊富に資金を投入して構築していくもの、と考えている方もいらっしゃると思いますが、中小企業こそブランド化により大企業との競争を避け差別化すべき、つまり、価格ではなく価値を売る、市場を絞り込んで勝てる土俵をつくる、「つくる」領域はもちろん「売る」領域でも付加価値創造できる、とし、具体的に20の戦略視点で語られています。

 

それでは、本書のポイントをご紹介します。

 

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ブランドとは、付加価値であり収益の源泉である。ブランド力=熱烈に支持してくれる顧客を創り、価格競争と決別するための価値であり、企業に高収益を安定的にもたらすための企業資源である

 

真面目な経営者ほど、商品さえよければ売れると勘違いしていることが多いのだが、いくら良い商品でも、その商品の良さを顧客に語りかける努力と工夫をしなければ、価値は増幅せず、付加価値は理解してもらえない。量を売って利益を出す経営から、質を売って利益を出す経営への転換すべき

 

企業や商品に対して感じる価値向上の5因子

・商品の機能・効能

・企業と商品の持つ特徴・個性・イメージ

・企業や商品への期待度・社会的評価・歴史・伝統・評判・サービス力

・商品・商品まわり・店舗などのデザイン性

・企業や商品への信頼できる第三者からの評価

 

優位性を発揮できる市場を見つけ出す視点

・大企業であっても非常に手間の掛かる市場または商品

・大企業が参入するには売上規模が限られているマーケット

・極めて専門的なノウハウを必要とし、専門外の人材ではすぐには対応できない市場

・ビジネスネットワークの構築に手間がかかり、大手でも参入しづらい市場

・独自の強みを発揮でき、他社が容易に追随できない市場

 

つくる領域における付加価値 10の戦略視点

1.プラスαの要素を加える

2.こだわりを見える化する

3.デザインで抜きに出る

4.すでにブランド力を備えた企業とコラボする

5.商品の「入れ物」にこだわる

6.時間を付加価値に変える

7.まったく新しい値付けをする

8.生活彩り品とギフト需要の両方を想定する

9.人間の第六感に訴えかける

10.共感・共鳴する要素を打ち出す

 

売る領域における付加価値 10の戦略視点

1.経験や文化も併せて販売する

2.顧客側から連絡したくなる要素を組み込む

3.顧客接点にこだわる

4.世の中に話題を広げる販路で売る

5.絶えず独自の情報価値を組み込む

6.情報連鎖を働きかける

7.付加価値を売る仕組みをつくって新たな販売体制で売る

8.徹底的に顧客の視点で対応し、他社を圧倒する魅力を作り出す

9.継続購入してもらえる関係を確立する

10.買ってよかったと思ってもらえる魅力をつくる

 

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2015年11月04日 by Atsushi Shibayama

ブランディング特集の第4回は「ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略」です。

 

ブランディングとは本質的に、共有された価値に基づく有形無形のコミュニティ資産を形成する行為であり、それは企業や製品と顧客とのつながりにとどまるものではない。生活者やパートナー、社会的コミュニティとの継続的な関係基盤を築き、その力を借りながら、新しい事業や価値を生み出していくための新しいシステムを創ることこそが、今日的なブランディングの意味である。

ブランドコミュニティ戦略や同氏のブランディングなどのコンセプトは、ソーシャル関連の問題認識を端的に言い表しているのではないでしょうか。情報の非対称性を前提とした関係から、フラットな関係に変わっていることを認識し、どのような手を打つべきかを整理していおり、会員プログラムとかアフターフォロー、囲い込みと称していたものがいかに前時代的であるかもよくわかります。

 

 

それでは、本書のポイントをいくつかご紹介します。

 

企業にとって顧客やステークホルダーとの共有価値を定義し、コラボレーションやイノベーションを通じて価値共創プロセスを駆動させるエンジンとなるのが、まさにブランドそのものであり、従来のマーケティングの定義が、「顧客を創造する活動」を意味するとすれば、今日のマーケティングは、「顧客と共に創造する」ことが重要なキーワードになっている。消費行為を通じて、つながり欲求を満たす「コラボ消費」(体験の共有、消費行為の共有)

 

現代のブランド戦略においては、従来のような情報の「ストック」のマネジメントにとどまらず、このダイナミックな「フロー」のプロセスをいかに創造し、マネジメントしていくかに焦点が移りつつあり、ブランドの機能や価値の領域が時代と共に変化・進化していくなか、「モノ」から「コト」へ、すなわち、製品による差別化からユーザ体験の価値を通じた差別化が行われるようになった。プロダクトや購買・サービス体験のデザインを通じて、ひとりひとりに驚きや感動を与えることで、強固なロイヤルティと評判を形成し、より高い付加価値を生み出せるようになった

 

ブランドが人の行動や社会の現実を変えるアクションを支援・奨励し、生活者同士の結びつきや価値を生み出すコミュニケーションとしてプランニングしていくことが肝心である

 

生活者の関心テーマをベースにした価値共有や共創プログラムのうち特筆すべきもの

・関心や体験共有の活性化

・ブランドのエナジー(活力)と関心を生み出すこと

・ブランドの質的認知を高めること

・関係を深めること

 

共有価値を発見・創造する4つのアプローチ

・ブランドに関わりをもつ「ファン」や「クリエイター層」に着目する

・「製品」から離れて、ユーザの生活行為・行動を発想する

・ブランドと関わるアウターコミュニティを見つけ出す

・カテゴリーを超えた企業・ブランドと顧客の関係テーマを見出す

 

コミュニティ・プラットフォーム戦略のポイント

・リアルとオンラインのコミュニティを結びつける戦略設計

・プラットフォームのユーザ特性を踏まえた活用の在り方を検討

・マーケティング目的に合わせたコミュニティタイプの選択(ブランドカルト、エリートコミュニティ、インフルエンサーグループ、アドバイザリーパネル、オーナーズクラブ、ユーザコミュニティ、サポーターネット、テーマコミュニティ、ファンサイト)

・コミュニティ・プラットフォーム設計に欠かせない5つの構成要素(コンテンツ、対話性、関係性、共創性、継続性)

・コミュニティへの継続的な参加を促すモチベーションの設計(自己達成、個別化、帰属・承認、他者貢献)

・価値共有とフィードバック・サイクルの設計

 

生活者とのコミュニケーションの枠組みを変える4つの着眼点

・キャンペーンからの誘導による時間軸での関係づくり

・メディア接触から生活者視点でのコンタクトポイト構築へ

・メディアを超えたコンテンツ開発と情報コンテクストの設計

・モノログからダイアログへの話法の転換

 

・価値共創を実現するコネクション・プランニングのステップ

1)ターゲットとのコネクションテーマ/アクションの目標設定

2)共感・話題を生み出す情報コンテクスト設計とコンテンツ開発

3)行動を促す、コンタクトポイント設計とプラットフォーム施策

4)継続対話や支援を通じてファンやサポータを創りだす

5)ユーザの情報共有やコラボレーションを動機づけ、支援する

6)「フィードバックと承認/アウトプット」を通じたサポータ化と奨励の促進

 

・究極のゴールは、顧客にいわば”従業員”になってもらうこと

 

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2015年11月03日 by Atsushi Shibayama

ブランディング特集の第3回は、「本当のブランド理念について語ろう」です。

著者は元P&Gのグローバル・マーケティング責任者で、同社で実績を積み上げ、技術主導だった企業文化をブランド理念主導へ変革していった実績をまとめています。本書では、ブランド理念に優れる各社の事例も載っていますが、特に著者が各国のブランドマネージャやGMとして苦労して変革し成果を上げていった話はかなり参考になります。

 

本書でのポイントをピックアップしていきましょう。

 

優れたリーダーの5つの行動原則

・人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかの側面で、”人々の生活をよりよいものにする”ことに関わるブランド理念を発見する

・ブランド理念を軸に、企業文化を構築する

・ブランド理念を社内外に発信し、社員と顧客の両方とそれを共有する

・ブランド理念に沿って、理想に近い顧客体験を提供する

・ブランド理念に照らして、ビジネスの進歩の度合いと社員の仕事ぶりを評価する

 

大切な5つの基本的価値

1.喜びを感じさせる 人々が幸せや驚き、無限の可能性を体験する後押しをする

2.結びつく事を助ける 人々がほかの人たちや世界と有意義な形で結びつく能力を高める

3.探究心を刺激する 人々が新しい世界や新しい経験に乗り出すのを助ける

4.誇りをかき立てる 人々が自信や力、安心感、活力を高めることを可能にする

5.社会に影響を及ぼす 現状を揺さぶり、新しいビジネスの枠組みを打ち出すなどして、社会全体に好ましい影響を与える

 

ブランド理念のチェックポイント

・ブランド理念は、ブランドの伝統と組織のDNAに沿っているか?

・ブランド理念は、人々の生活に好ましい影響を及ぼしているか?

・リーダーがブランド理念の推進に積極的に関わっているか?ブランド理念は社員と顧客を鼓舞できているか?

・ブランド理念は、成長の源泉となるイノベーションを継続的に生み出せているか?

 

企業文化を築く10の手法

1.人々の行動の背中を押せるブランド理念を掘り起こし、それを実践する

2.自分が何を大切にしているかを社内外にはっきり伝える

3.達成したい目標のために組織を設計する

4.チームを整備する。それも迅速に

5.あらゆるタイプのイノベーションを後押しする

6.高い基準を設定する

7.常にスタッフをトレーニングする

8.象徴的な活動を行い、人々の興奮を生み出す

9.勝者のように考え、勝者のように行動する

10.どういう「遺産」を残したいかを意識して行動する

 

理想的な顧客体験を生むイノベーションの5つの原則

1.ブランド理念から出発する

2.イノベーションに人間味をもたせる

3.多くの人とコラボレーションを行う

4.イノベーションのポートフォリオをもつ

5.イノベーションのプロセスを確立する

 

成長を持続させるための評価の4原則

1.そのブランドの未来にとって最も重要な顧客や利害関係者との関係で、ブランド理念の実現状況を評価する

2.ブランド理念を基準に、重要業績評価の指標を選ぶ

3.ブランド理念の推進に貢献することを全社員の職務計画の一部とするよう義務づけ、ブランド理念に照らして社員の個人成績を評価する

4.顧客や消費者と接する時間を測定し、そういう活動を奨励する

 

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2015年11月02日 by Atsushi Shibayama

ブランディング特集の第2回でご紹介するのは「プラットフォームブランディング」。

 

モノからコトへ。顧客体験(UX)の重要性はよく言われることで目新しい話ではありませんね。似たような話として「ブランド」。なんだか高級品・ラグジュアリー領域の話ようで、これまたよく分からない概念。そしてプラットフォーム。これも語義が様々なで分かったような分からないような。

これらは全て、同じ本質であり、この3つを統合して一貫性のある戦略として策定・実行していくことが重要である、つまりブランド戦略とは、コミュニケーション施策ではなく、どのような体験価値を提供するのかのコアである、と解説されています。そして、それらは暗黙知であるアートではなく、再現可能な形式知であるサイエンスとして整理し実践していこうという主張でもありました。それぞれの要素で、アップル、フォルクスワーゲン、ダイソン、フェイスブック、サントリー、マツダなどが実践例として紹介されています。

 

本書のポイントをいくつかピックアップしてみましょう。

 

ブランドとは、生活者の頭の中にある、企業や商品が提供する体験の価値と分かりやすい識別記号がセットになった記憶。ある製品・サービスについて「知覚された価値」と、それについて生活者の頭の中にある「識別記号」とが結びつき、包括された概念。

 

ブランド成立への3つのステップ

1)生活者の頭の中で、ロゴなどの識別記号が記憶される

2)生活者が「識別記号」を見れば、「知覚価値」を想起できる

3)生活者が「知覚価値」が頭に浮かんだら、「識別記号」を想起できる

 

生活者のブランド評価は、体験の魅力度と、体験の量・時間と、体験の一貫性によってなされ、ポイントは体験の一貫性であり、強いいブランドの効用として、競合に埋もれずに選ばれる、有利な取引条件(価格)を付けられる、リピート率が向上する、ということがあげられる。

 

グローバルに市場が統合されることの意味は、各国の市場の生活者に対して個別に最適化した商品よりも「センスのいい商品」の方が、生活者に最適化された凡庸な商品を踏みつぶして世界を席巻するチャンスが出てくるということで、マーケティングよりもブランディングが決め手になる。

 

モノから体験への価値転換(ブランド体験フロー)は、ブランドの価値を「製品」だけでなく、購入前のブランド認知から購入、利用、そして維持管理やサポートといった、ブランドにまつわるプロセスの体験における総和ととらえる考え方によってなされる。

 

ブランドとはプラットフォームであり、体験価値の中に生活者同士のコミュニケーションを取り込むため、その「持ち回り役」的な存在として、企業は自らを再定義すべき。

 

プラットフォームとは、複数の用途・仕様の製品をより低コストで開発・生産することを狙いとした技術的な共通基盤であり、ユーザとユーザのコミュニケーションを媒介することで価値を生み出す場。ただし、提供する体験価値は、その価値に見合った料金を受益者から直接受け取る事が難しく、より間接的な方法(広告販売、紹介手数料など)を採らざるを得ないことが多い。また、中核となる製品・サービス以外の体験勝ちを、自社でない「第三者」が提供することになり、その「第三者」がプラットフォームビジネスそのものを模倣し顧客を横取りすることがある。

 

ブランド戦略とは、社内では事業戦略と4P施策を整合させるものであり、顧客にはブランド体験の一貫性を生み出す「核」となるもの。ターゲットには、売上規模を確保するための拡販層としてのセールスターゲットと、自社ブランドの思想や世界観という深いレベルで共感しブランドの象徴的な顧客層となるブランドターゲットがあり、その設定には、顧客体験におけるインサイト(本音)を引き出す対象者の基準となる、マーケティング4P施策の一貫性を生み出す拠り所となる、プロモーション施策などで対外的に提示する顧客像に適用する、という意義がある。

 

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2015年11月01日 by Atsushi Shibayama

11月になりましたね。今週はブランディングに関する書籍を毎日1冊ずつご紹介します。

今日は「戦略としてのブランド」。まずは基礎知識を習得するのにちょうどよい本です。ブランドというとラグジュアリー高級品や、CIロゴとか、認知拡大を目的とした広告宣伝の世界かと思っている方もいらっしゃるかもしれません。「ブランディングとは顧客への価値をあらゆるチャネルで一貫性を持って提供すること」であり、「識別記号と知覚価値の総体」と言われると、マーケティング全般に関する話として聞こえますね。

 

本書からポイントをいくつかピックアップしてみましょう。

 

■ブランドとは

ブランドとは消費者が思い浮かべる価値イメージであり、様々な企業活動、あらゆる顧客接点から消費者が感じ取る価値イメージの蓄積で形成されていく。ブランドをつくることは、単にマーケティングの1テーマではなく企業の戦略そのもの。

 

優れたブランドであるための3つの要件

・ターゲットである消費者層に認知されており、明確かつ統一的な価値イメージがある

・その価値イメージに共感する消費者が存在する

・競合ブランドに対して差別化されている

 

強いブランドを作るために押さえるべき3つのポイント

・消費者に感じてほしいと考える価値が明確に定まっていること

・その価値があらゆる顧客接点において整合性を持った形で実際に消費者に伝わること

・継続性があること

 

ブランドに関する誤った認識

・ブランド=マーケティングではない

・ブランド=ラグジュアリーではない

・ブランド戦略という思考停止

・コーポレートブランド至上主義

 

■なぜ日本企業はブランド構築が弱いのか

・世界市場の多極化、先進国市場の成熟化・多様化、日本経済の成熟化、グローバル競争環境の変化により、従来の日本企業のような、自前主義でじっくり製品を開発し、時間をかけて改善、改良していくことによる品質の向上はもはや通用しない。

・どの部品をどう組み合わせ、その中で自社は何をやるのか、それ以外はどう外部を活用していくか、ということを”プロデュース”していく能力が重要になる。付加価値を生み出す源泉が、ものづくりそのものから、企画力やプロデューサーとしての能力のほうに移りつつある。

・日本企業は、高度経済成長時代の、とにかく「いいモノ」さえ作れば売れる、お客さんに価値を認めてもらえるはず、という意識が強すぎて、本当に消費者はそれらを価値として感じているかという視点が抜け落ちている。

・また、日本企業は、価値創出ではなく、販売力に依存した成長モデルだった。(例:パナソニック(ナショナルショップ)、資生堂(資生堂チェーンストア)、花王(専門卸子会社)、オンワード梶山(百貨店)、大手生命保険(生保レディ))

 

■ブランド構築の6つのパターン

1.ハイプレステージ型 (エルメス、フェラーリ、ブレゲなど)

・独創的な価値づくり

・独創的な価値を体現するマーケティング

・グローバルでの価値提供を支える仕組み

 

2.プロダクトアウト型(アップル、レッドブル、デルなど)

・新たな発想、アイデアの創出

・消費者に新たな価値を伝えるマーケティング

・発想・アイデアを実現・収益化する仕組み

 

3.グローバルメガブランド型(P&G、ユニリーバ、ロレアルなど)

・ブランド育成、新規参入の勝ちパターン

・勝ちパターンを実現するオペレーション

・ブランド育成にフォーカスした組織体制

 

4.グローバルストアブランド型(ZARA、H&M、IKEAなど)

・明快な提供価値

・勝てるオペレーション

・海外展開の勝ちパターン

・オペレーションと勝ちパターンを実行する組織・仕組み

 

5.コーポレートブランド型(サムスン、LG、ハイアール、VWなど)

・グローバル市場を俯瞰して認識する

・強い本社(本社にローカルの情報やノウハウ、ナレッジを集約)

・国・商品カテゴリーをまたいだ戦略的な資源配分

・現地市場に適応したマーケティング

・グローバルでの効率的な商品開発体制

・バリューチェーンをグローバルで最適化

・グローバル展開の基本パターンを確立

・グローバル人材の育成、活用

 

6.マルチローカルブランド型(ネスレ、ダノン、コカコーラなど)

・多数のブランドを育成・管理する仕組み

・ローカルニーズを徹底理解し製品に確実に反映させる仕組み

・グローバルレベルでのシナジーを刈り取る工夫

・ローカル分散型の組織体制

・ローカル人材を戦力化する仕組み

 

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2015年10月19日 by Atsushi Shibayama

今日ご紹介するのは、「ティッピング・ポイント」。2000年に発行された古典で、人間同士が社会の中でどのように影響し合うのかについて語られています。既に絶版なのですが、文庫版がソフトバンク文庫から出版されています。(急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則)

 

社会の流行や変化は、クチコミによって起こる

感染的特徴をもち、小さな変化が大きな結果をもたらすため、劇的に起こる。

これはまるで「一気に傾く(tip)」ような変化なのでティッピング・ポイント(tipping point)と名付けたようです。(野中郁次郎氏の著書「イノベーションの本質」では「臨界点」という訳語を当てています。個人的にはこちらの方がしっくりきます)

これには3つの要因があるそうです。

  • 少数者の法則 (”感染”を引き起こすのは以下のような才能を持った少数の人々)
  • 粘りの要素 (メッセージを記憶に残りやすいように、情報提示の仕方にさりげなく、だが有意義な変更を加えていく)
  • 背景の力 (根本的な問題ではなく、直接的な環境の些細な要素に手を加えることによって、それを反転させ一気に傾かせる

 

”感染”の才能を持った少数者3種

コネクター(媒介者)
・世界を束ねる特殊な才能の持ち主
・クチコミ伝染の仕掛け人
・人脈の専門家(社会的な「にかわ」)

メイヴン(情報通)
・知識を蓄えている人
・収集した情報を他人に教えることに喜びを覚える人
・情報の専門家(データバンク)

セールスマン(説得者)
・説得のプロ
・感情や気分を上手に表現できる人

 

本書の中では、「キャズム」等の考え方とティッピング・ポイントの関係も述べられており、併せて読むことで理解はより深まると思います。セサミストリートやニューヨーク地下鉄の事例も取り上げられており、非常に興味深い内容です。、

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2015年10月14日 by Atsushi Shibayama

10月になり、すっかり秋めいてきましたね。読書の秋です。

さて、本日ご紹介するのは前回に引き続きクリステンセン教授の著書「イノベーションの解」。マーケティング、特に商品企画に関わる人には必読だと思います。前作「イノベーションのジレンマ」では 「なぜ優良企業が失敗するのか?」を明らかにしていましたが、本作「イノベーションへの解」はそれを適切にマネジメントし、自分たちがイノベーションを 起こすための方法にまで実践化しており、理論がかなり昇華されています。

 

戦略そのものの緻密さよりも、「それを立案し実行するためのプロセス、そしてそのプロセスを確立するための企業の価値基準」を適切にマネジメントすべきというのがポイントです。

 

この理論においては、破壊的イノベーションには「新市場型破壊」「ローエンド型破壊」の2種類を挙げています。前者は、今まで金や道具、スキルがないため専門家に頼る必要があったり、それを利用するには不便だったので利用できなかったものに対して提供することで、新たに市場を生み出すもの。これに対し後者は、現在既に市場は存在するが高くて一般の大多数は利用できないため、価格が低ければ性能面で劣っていても利用しようとする顧客に対し提供するもの。もちろん低価格でも十分に利益を見込めるものでなければならないとのこと。新たな商品を企画する際には、まず前者にあたるかどうかを検討し、もし当てはまらないのであれば次に後者を検討すべきとも説いています。

 

また、市場細分化については、顧客の属性ではなく解決したい状況によって分類すべきであり、販売チャネルや広告、ブランド戦略でも同様。これは言われてみると当然だと感じるかもしれませんが、実際には実践するのは容易ではありませんね。幹部からはその市場に対して「定量化による評価」を要求されるのではないでしょうか。企業から適切な資源を投下してもらうにも、その新商品企画を既存市場に対する「脅威」と捉えるのか、新たな「機会」と捉えるのか、によって成功か失敗かが決まるため、幹部に対しては「脅威」であると訴え、プロジェクトメンバの選定では「機会」と捉えられる人材をアサインするのがよいとのこと。

 

次に、競合優位性の築き方ですが、市場は必ず持続的イノベーションを通じて商品性能が顧客ニーズを超えていきます。その転換時に競争の基盤が変化するので、その時期を見計らい適切にバリュー チェーンを適合させるため、商品性能が不十分な段階ではより早く性能を高めるための独自の統合アーキテクチャが有効となります。しかし商品性能が顧客ニーズを超えてしまった場合には、顧客ごとのカスタマイズや即納体制等、競争基盤がスピードや利便性に変わるため、部品はモジュール化していくとのこと。

 

破壊的イノベーションに対する幹部のマネジメントとしては、「成長は気長に待つが、利益は早期に要求する」「必要になる前に始める」ということが肝要であるようです。既存事業、そして持続的イノベーションと同じ価値基準・投資判断では破壊的イノベーションは日の目を見ることはできませんし、大きく投資し大きく利益を得ようと すると、既にある市場を攻めることになるため、既に参入している大手企業に勝つことはできません。利益を早期に出すよう要求することで無消費の新たな市場に目が向くようになり、その顧客が求める価格でも利益がでるようなコスト構造を模索するようにプロジェクトメンバを仕向けられるとのこと。

 

興味深かった点は、プロジェクトメンバの資質についてです。多くの企業は自社のエース、つまり今まで既存事業で大きな成果・実績を挙げてきた人材を投入するそうです。しかし、そのような人材の「属性」だけでは資質は判断できないとのこと。破壊的イノベーションでは、どこに市場があり、顧客がどのような機能を求めているか不明であるため、当初立案した仮説に従って戦 略・戦術を練り、一気に投資するような方法はむしろ避けるべきこと。往々にしてエース級の人材はそういう「経験」を積んでいないそうです。アサインすべ き人材の必要スペックは「経験を積んでいること」であることから、マネジメントとしては常にそういう「場」を提供するよう新規事業案件を作るべきであり、それを経験させるような人材育成も必要になるそうです。

 

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2015年09月10日 by Atsushi Shibayama

今日ご紹介するのは「イノベーションのジレンマ」。これももはや古典の領域かもしれませんが名著ですね。非常に洞察力に優れ、市場の変遷を俯瞰し、どう対処していくべきかについて、示唆に富む内容です。優れた経営が失敗につながるという衝撃の主張をしており、技術革新を持続的イノベーションと破壊的イノベーションに分類し、特に後者の脅威と機会について論じています。

 

企業の行動特性は、以下の4要素があり、その行動を支える能力としては、資源、プロセス、価値基準の3つがあると言います。

  • ・技術革新の速度は、顧客ニーズの進展より速いため、供給が需要を追い越してしまう
  • ・競争の激化によって、利益率の高い上位市場(高度な機能を望む顧客)へ移行する
  • ・利益率の低い市場へ戻ることは非常に難しい
  • ・市場の声を反映することに長けた組織を形成するため、まだ勃興していない市場に対して既存の価値基準、プロセスを適用してもマネジメントできない

 

本書の主張の中心を成す「破壊的イノベーション」は、既存企業においては魅力が薄く、参入したくないものがほとんどで、特徴としては、単純、低価格、便利などを挙げています。例としては、

  • ・電話に対するIP電話
  • ・FTTHに対するADSL
  • ・固定電話に対する携帯電話
  • ・銀塩カメラに対するデジタルカメラ

など。その技術の出現当初は、安かろう悪かろうで既存顧客には見向きもされないため、今までない用途を掘り起こすことから始めなければならないが、それによりある一定の市場を確立すると、さらに技術革新により性能を向上され、上位市場に進出していく。とうとう既存市場に参入する頃には、低コストを武器に 市場を席捲するというシナリオ。

 

これを既存企業が成功させるには、

  • ・組織を分離し、小さな成功でも前向きになれる小組織とする
  • ・市場は掘り起こすものとの前提に立ち、いきなり大きな投資をすることを控え、プロトタイプの提供から顧客ニーズを引き出して仕様を固めていく

としていますが、、、

 

ご興味のある方は、これと共に次回紹介する「イノベーションの解」を合わせて読むのがよいかもしれません。

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2015年09月01日 by Atsushi Shibayama

今日から9月です。夏休みも終わってしまい、急に秋らしくなりましたね。

さて、本日ご紹介するのは「成毛式・実践マーケティング塾」。元マイクロソフト社長である成毛氏のノウハウや自説が記されており、興味深い内容です。

「がんばる」よりもマーケティングを

から始まる本書は、マーケティングという仕事の特殊性と重要性から語り始めます。

 

マーケティング活動には、時に「肉を切らせて骨を断つ」ような部分がある。費用をつぎ込んでも製品の認知度を高める。自社製品への苦情を喜んで集め、値引きを乱発してでも売上高や件数のノルマを果たそうとする営業に対し、いかに「高く売るか」に知恵を絞る。(中略)こうした活動を通じ、最終的な「利益」を最大にすること。言い換えれば「製品」を「商品」に変えること。そうした役割を果たせるのは生産でも営業でもなくマーケティング部門しかない。

マーケティングとは戦略であり、兵法だ。「肉を切らせて骨を断つ」のもその一つ。どっちが最終的にトクかを常に考える。そのためには、からまりあった因果関係を構図化し、きっちりと位置づけ、先を読む。そのための「世界観」がマーケティングには必要になる。(中略)資本関係もなく顔すら知らない「第三 者」の利害にまで目配りするのは唯一、マーケティングという特殊なセクションの役割であるべきなのだ。

目線のありかた、拘るべき価値観などが極めて明快で、エコシステム全体を俯瞰しどこを突けば最適化されるのかという「世界観」というのは意外と見失ってしまうところかもしれません。

また、戦略・戦術についても、平易に解説しています。
・戦略=競争相手が誰で、どの段階で相手に勝ったとするかを判定するためのもの
・戦術=どうやって売るか、価格をいくらにするかという考え

戦術のセオリーとして、以下の4点を挙げています。
・二正面作戦を絶対にしてはいけない
・二番手企業は一点突破
・先行企業のお客の不満から学ぶ
・限定された市場でナンバーワンを目指せ

これは、「中途半端にリソースがあるからか、失敗を過度に恐れるからか、総花的になりがちな計画ではダメ。やらないことを決めるのが戦略であり、目標に向かって最短で達成するための戦術なのだから。」と言っているように感じました。当たり前なのですが、蛸壺に嵌っていると、見えなくなりがちですね。

出版されたのが2002年なので、内容も当時の市場や生活者の動向から得られた洞察を語っているものもあり、全てが今も当てはまるものではないですが、モノの見方、切り口としては参考になります。

 

 

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2015年07月23日 by Atsushi Shibayama

今日、ご紹介するのは「60分間・企業ダントツ化プロジェクト」。

今まで理論と して学んできた経営学が、すぅーっと身体に溶け込んでいく感覚で読み進められ、事業への参入タイミングや、商品のライフサイクルの見極め方、価格設定、購買意欲の高め方など、実践的で理解しやすい内容です。

賢い経営者がいるから会社が繁栄するのではなく、マヌケでも反映してしまうビジネスモデルをつくる。

戦略の定義や戦術との違いについても簡潔に述べ、表出する戦術だけを真似た会社は失敗すると言います。そして、「スター戦略構築法」と名付けられた6つの項目について、どのように検討していくべきかを解説していました。

 

○スター戦略構築法
①商品
・商品寿命を予測する
・商品のニーズ・ウォンツを考える
・商品コンセプトの伝わりやすさを考える
・商品の広がり、展開力を考える

②顧客
・つきあいたくない客・つきあいたい客を明らかにする
・顧客ターゲットに優先順位をつける
・顧客獲得コストを検討する
・顧客を連れてくる影響力のある顧客は誰か?

③競合
・のんびりとした市場を狙う
・顧客視点で競争優位性を分析する
・顧客が感じる価値観を検討する
・参入障壁・撤退障壁を検討する

④収益シミュレーション
・顧客の生涯価値を予測する

⑤タイミング
・バーゲンセール型か?エブリディ・ロープライス型か?
・1ステップで売る?2ステップで売る?

⑥メッセージ
・ニーズ・ウォンツを分析しながら高めていく
-差し迫った必要があるか?
-行動を起こすか?
-行動をストップしないか?
-緊急性があるか?

 

私が本書を読んで印象に残っているのは、商品や事業の寿命を予測することはもちろん、効果的に事業を伸ばしていく「上りエスカレーター」というタイミングを見極めることが重要であるという点。そして、著者の主張で一貫しているのは、どう競合に立ち向かうのか?ではなくく、いかにして戦わずにすむかを考え抜くことがマーケティングの本質、であり、様々な切り口から分かりやすく説明されています。

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