[マーケティング知識]ゼロ・トゥ・ワン

あけましておめでとうございます。

昨年は、マーケティングオートメーションツールを導入し、デジタルマーケティングにトライアルされた企業が数多く出てきましたね。今年はそのチャレンジを本格化し、飛躍していこうと意気込んでいらっしゃるマーケターの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

我々も、このコラムを通じて、学んできたことをみなさんとシェアし、より一層チャレンジしていこうと思いますので、本年もよろしくお付き合いください。

 

さて、新年初めてご紹介するのは、「ゼロ・トゥ・ワン」です。

「ペイパルマフィア」という言葉を聞くことがありますが、Tesla、Yammer、Yelp、LinkedInなどはペイパル出身者による創業なのだそうです。本書の著者、Peter Thielもそのひとりで、ペイパルCEOだった人物。彼は、この本で「新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるか」について著しています。
「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」

と採用面接で必ず訊くといいます。未来とは世界が今と違う姿になっていることであり、それを左右するのはグローバリゼーションよりテクノロジーの方がはるかに重要であるのだから、それをどうやって生み出すのか、そのための問いだと。

そして、それを生み出すために最適なチームがスタートアップだと述べています。

・21世紀をこれまでより平和な繁栄の時代にしてくれる新たなテクノロジーを思い描き、それを創りだすことが、今の僕らに与えられた挑戦なのだ。

・新しいテクノロジーを生み出すのは、だいたいベンチャー企業、つまりスタートアップだ。(中略)より良い世界を作ってきたのは、使命感で結ばれた一握りの人たちだった。

・前向きに表現するなら、スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ。新しい会社のいちばんの強みは新しい考え方で、少人数なら俊敏に動けることはもちろん、考えるスペースが与えられることが大きな利点になる。

興味深いのは、リーン手法や競争を否定的に考えている点です。
・小さな違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい
・出来の悪い計画でもないよりはいい
・競争の激しい市場では収益が消失する
・販売はプロダクトと同じくらい大切だ。

資本主義とは本質的に独占に向かうのであり、競争は健全であるというのはイデオロギーでしかないと断じています。だから、どうやって独占状態を創り上げるかに心血を注ぐべきだと説いており、独占企業の特徴としては以下の点をいくつか持っているそうです。

・プロプライエタリー・テクノロジー
・ネットワーク効果
・規模の経済
・ブランディング

そして、独占を築くためには、慎重に市場を選び、じっくり順を追って拡大することが必要とも。

・小さく始めて独占する(少数の特定ユーザが集中していながら、ライバルがほとんどあるいはまったくいない市場)
・規模拡大(関連する少し大きな市場に徐々に拡大)
・破壊しない(古い業界を意識して大企業に直接挑戦するより、新しい市場の創造に力を注ぎできるだけ競争を避ける)

もうひとつ興味深いことがありました。
それは確率論ではなくべき乗則に従うこと。ポートフォリオ理論のように、起業家は自分自身を「分散」できないので費やす時間は何かに賭けることになります。VCのリターンも実はひとつの大成功案件のリターンが他の投資額を上回るというのは驚きです。とすると、どうやってそんな大成功なアイデアを見つけ出すのか?そのためのキーワードは「隠れた真実」だという。それを考えるための問い、それが冒頭の質問になるそうです。

賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?

AirBnBやUberはそれを見つけた例で、振り返ればごく当たり前に見える洞察があまりにも単純なので、隠れた真実の存在を信じそれを探さなければ、目の前にあるチャンスに気付くことはできないのだそうです。

この他、なるほどと思った点がありましたので、ご紹介します。
・創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない
・何かを始めるにあたって、最も重要な最初の決断は、「誰と始めるか」
・仲間と協力できる優秀な人材は必要だけれど、全員を長期的に一致されるような組織構造もまた必要だ。(3つの役割:所有、経営、統治)
・報酬は現金よりも自社株にすることで、社員の意識を未来価値の創造へと向ける(だからCEOの給料(現金)も少ない方がうまくいく)
・演技と同じで、売り込みだと分からないのが一流のセールスだ
・差別化されていないプロダクトでも営業と販売が優れていれば独占を築くことはできる
・販売にも独自のべき乗即があり、プロダクト自体に友人を呼び込みたくなるような機能がある場合、バイラルする。
・バイラル成長の可能性があるような市場の中の、いちばん重要なセグメントを最初に支配した会社が市場全体のラストムーバ―になる

最後に、ビジネスを成功させるために答えを出すべき7つの質問が参考になります。
1.エンジニアリング
段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術を開発できるだろうか?
2.タイミング
このビジネスを始めるのに、今が適切なタイミングか?
3.独占
大きなシェアがとれるような小さな市場から始めているか?
4.人材
正しいチーム作りができているか?
5.販売
プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?
6.永続性
この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか?
7.隠れた真実
他社が気付いていない、独自のチャンスを見つけているか?

終章で語っていた一節が印象的。未来は予測するものではなく、自らが創るものだ、という著者の主張がここに纏まっていますね。

今僕たちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来を創ること、つまりゼロから1を生み出すことだ。そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ。古代人が初めて世界を見た時のような新鮮さと違和感を持って、あらためて世界を見ることで、僕たちは世界を創り直し、未来にそれを残すことができる。

この記事の著者

Atsushi Shibayama
通信業界での法人営業を経て、ネットサービス業界での商品企画やマーケティング、ビジネス開発に10年以上携わる。専門はB2B2Cプラットフォームや不動産投資マネジメント、イノベーション。
デジタルマーケティングコンサルタントとして、主にB2B企業の戦略立案や実行計画策定を支援している。
2016年01月04日 by
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